「脳と神経」への手紙
慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーと遺伝性Charcot-Marie-Toothニューロパチーの鑑別について
長谷川 修
1
1横浜市立大学医学部神経内科
pp.442
発行日 2000年5月1日
Published Date 2000/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901603
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拝啓
本誌51巻12号に掲載された織田先生らの論文,「著明なonion bulb様の病理変化を呈し遺伝性末梢神経障害に類似した慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の若年発症例」2)を興味深く読ませていただきました。本例は,処女歩行遅延と足変形を伴い,伝導障害および病理変化が極めて高度であったために,遺伝性のChar-cot-Marie-Toothニューロパチー(CMT)との鑑別が問題となったものと思われます。
ところで,先天性のCMTと後天性の慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)とでは,障害の均一さが異なります。すなわち,CMT−1では高度の軸索消失と脱髄を伴いますが,先天性の遺伝子異常に基づく疾患であることから,変化が比較的均一です。残存線維が少なく,伝導速度が極めて遅いものの,大部分の線維が途中でブロックされることなく何とか最後まで伝わります(CMT-Xを除く)。これに対して,後天性炎症に伴うCIDPでは病変が不均一に生じるため,同一神経幹でも比較的正常に伝導する部位と伝導ブロックに陥る部位とが混在します。そのため,伝導検査ではこの不均一さを反映して,伝導ブロック所見や伝導遅延の部位差がみられます。また,線維ごとの不均一さを反映して,様々な遅延電位や波形の時間的分散所見が目立ち,刺激点の違いによって異なる複合筋活動電位(CMAP)が得られることとなります1)。これらの特徴が,両者の鑑別に役立ちます。
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