「脳と神経」への手紙
「著明なonion bulb様の病理変化を呈し遺伝性末梢神経障害に類似した慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の若年発症例」についての追加コメント
織田 雅也
1
,
久堀 保
1
,
宇高 不可思
1
1住友病院神経内科
pp.443
発行日 2000年5月1日
Published Date 2000/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901604
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拝復
長谷川先生からのコメントを拝見いたしました。私どもの報告例1)の末梢神経伝導検査(NCS)所見につき,解説を加えていただきまして誠にありがとうございました。先生の御指摘のとおり,慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)では遺伝性運動感覚ニューロパチー(HMSN)と異なり障害の程度が部位により不均一であることが特徴であり,NCSで伝導障害の多巣性が認められることは鑑別に有用な所見です2)。私どもが症例報告で呈示いたしましたNCSの所見は,右正中神経,右尺骨神経とも導出された複合筋活動電位(CMAP)の波形はtemporal dispersionが著明で,CIDPを示唆するものでした。しかし他部位では運動・感覚神経とも活動電位が導出されず,多岐におよぶ重度の障害が示唆されました。この症例ではNCS異常および病理学的変化が非常に高度であるにもかかわらず,処女歩行遅延のエピソード以降今回の15歳での発症まで無症候であり,幼少期から長期間にわたり軽度の神経障害が緩徐に蓄積されたものと推測されます。このような場合,後天性の炎症による変化でもHMSNのごとく比較的均一な障害をもたらす可能性もあるのでないかと考えます。
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