脳腫瘍の血管増殖因子

Angiogenic Factor of Brain Tumor

はじめに

　固形腫瘍において，新生血管の増殖の程度は一般に患者の予後を左右する重要なファクターの1つとされているが^33），特に脳腫瘍では新生血管の形態が注目されており，その形態学的特徴と組織型との関係に関しての検討が行われている^25）。Diffuse astrocytomaにおいては，その組織学的悪性度の判定に新生血管内皮細胞のglomeruloid proliferationの存在が重要とされ，anaplastic astrocytomaやglioblastomaの特徴的所見とされている^13）。Daumus-Dupport^8）により提唱され，WHOのclassificationにも取り入れられたSt-Anne／MAYO classmcationは簡便で再現性の高い組織学的分類として広く診断に用いられており，新生血管内皮細胞の変化がその診断要素の1つとして記載されている。われわれは，新生血管密度やglomeruloid prolifera-tionといった形態学的特徴が生物学的悪性度と強く関係していることも証明してきた^30）。本稿では，脳腫瘍の血管新生に関与する増殖因子，および抑制因子を概説する。