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特集 海馬の神経病理学
2.系統変性としてのPerforant pathway変性—Alzheimer型痴呆における海馬の2次性萎縮
Perforant Pathway Degeneration as a System Degeneration : Secondary Hippocampal Degeneration in Alzheimer-type Dementia
水谷 俊雄
1
Toshio Mizutani
1
1東京都老人総合研究所神経病理研究部
1Department of Laboratory Medicine, Tokyo Metropolitan Neurological Hospital
キーワード:
Alzheimer-type dementia
,
cortical degenerative disease
,
perforant pathway
,
hippocampus
,
entorhinal cortex
Keyword:
Alzheimer-type dementia
,
cortical degenerative disease
,
perforant pathway
,
hippocampus
,
entorhinal cortex
pp.895-905
発行日 1998年10月1日
Published Date 1998/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901343
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発端
従来,Pick病やCreutzfeldt-Jakob病では海馬が病変から逃れることが強調されてきた7,28,35)。もちろん,それは他の新皮質に比べて相対的に病変が軽いという意味である。それに対して,Alzheimer型痴呆(ATD)では海馬の萎縮が1次性であることは自明のこととされ1,2),海馬傍回と海馬の相対的な関係に着目した論文は皆無である。しかし,ATD脳を虚心坦懐に観察すれば,海馬傍回が海馬に比べて相対的に小さいことに気づく(図1)。もちろん,健常脳と比較すれば両者とも小さいが,重要なことは海馬傍回の萎縮が海馬の萎縮を上回ることである。この現象を神経病理学からみる限り,海馬が他の領域の影響を受けず1次的に萎縮するとは非常に考えにくい。これがわれわれの海馬に関する一連の研究の発端であった21,25)。本論文では生理的加齢変化と対比させつつ,ATDにおける海馬の萎縮が海馬傍回病変の2次的変化を大きく受けていること,そしてこの現象は決してATDに留まらず,恐らく側頭葉を侵す変性疾患に共通したメカニズムであること,を述べる。なお,本論文ではCA 1からCA 4に区分される海馬を固有海馬(hippo-campus proper),海馬支脚,固有海馬,歯状回を合わせたものを海馬体(hippocampal formation)と称する。
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