Japanese
English
総説
精神遅滞と脆弱X症候群
Mental Retardation and Fragile X syndrome
難波 栄二
1
Eiji Nanba
1
1鳥取大学遺伝子実験施設
1Gene Research Center, Tottori University
キーワード:
fragile X syndrome
,
CGG repeat
,
triplet repeat
,
FMR-1
,
FMR-2
Keyword:
fragile X syndrome
,
CGG repeat
,
triplet repeat
,
FMR-1
,
FMR-2
pp.317-323
発行日 1998年4月1日
Published Date 1998/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901263
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はじめに
精神遅滞は,知能が異常に遅滞する状態を指し,その頻度は一般人口の約3%である。精神遅滞も他の多くの疾患と同様に,遺伝的要因と環境的要因の両方の要因によって引き起こされる。この疾患には,先天代謝異常症や神経皮膚症候群などのように単一の遺伝的要因で発症するものから,胎内感染や分娩障害などの環境的要因で発症するものなど多くの原因が存在する。しかし,原因が明らかでない患者も多く,これらの多くは多数の遺伝子が関連するものや,遺伝と環境の相互作用によって発症するものと考えられ,原因は単純ではない。また,この疾患は脳の機能障害により引き起こされるが,その分子レベルでのメカニズムの解明には多くの課題が残されている。近年,脳科学研究の重要性が認識されてきており,精神遅滞の研究もますます重要になってきている。
一方,ヒトゲノムプロジェクトなどに代表されるように,近年分子生物学や遺伝学の目覚ましい発展により,様々な遺伝性疾患の原因遺伝子が明らかにされてきている。特に,症例の家系解析から出発するポジショナールクローニング法の進歩により,従来原因不明とされていた疾患の原因遺伝子が単離できる時代になった。この方法により,脆弱X症候群や結節性硬化症など,精神遅滞の原因として重要な疾患の原因遺伝子も次々に単離されてきている。
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