「脳と神経」への手紙
ヒト脳病理解剖標本の切り出しのための一工夫
五十島 美千子
1
,
坂本 直喜
1
,
井上 彬
1
,
森田 俊
1
,
小柳 清光
2,3
1信楽園病院病理科
2新潟大学脳研究所脳疾患解析センター
3東京都神経科学総合研究所神経病理学研究部門
pp.948
発行日 1997年10月1日
Published Date 1997/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901185
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ヒトの神経系とくに中枢神経系の病理学的検索では,個々の細胞胞体の変化を観察することに加え,病巣と正常部分との対比,また解剖学的構造の中での病変の局在,あるいは線維結合に基づく病変の拡がり,などを観察することによってはじめて正しく病理診断できることがしばしばある。このため中枢神経系の光顕標本(プレパラート)では,変化が予想される脳回だけでなく隣接する脳回をともに,また尾状核と被殻・淡蒼球,小脳半球と歯状核などを一塊として切り出し標本化することが通常行われている。従って中枢神経系から切り出される標本,また完成したプレパラートの大きさは必然的に大きくなる。このときプレパラート保存のための十分なスペースが確保されている施設では切り出す標本の大きさに配慮する必要がない。しかし当院を含め多くの市中病院の病理科・部門ではプレパラート保存のための十分なスペースが将来に渡って確保されているとは言い難く,わずかなスペースも活用して病理標本を保存・管理しているのが実状である。
病理医は病理診断のため,固定された中枢神経系の数mm〜1cm程度の厚さの連続割断標本から光顕検索に必要と考えられる大きさの標本を切り出す。
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