Japanese
English
特集 脳腫瘍のgene therapy
アンチセンス分子を用いたヒトグリオーマ細胞へのアプローチ
Approach to Human Glioma Cells Using Antisense Molecules
吉田 誠一
1
,
田中 隆一
1
Seiichi Yoshida
1
,
Ryuichi Tanaka
1
1新潟大学脳研究所脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Brain Research Institute, Niigata University
キーワード:
malignant glioma
,
antisense molecules
,
gene therapy
,
TGF—α
,
IL−8
Keyword:
malignant glioma
,
antisense molecules
,
gene therapy
,
TGF—α
,
IL−8
pp.823-828
発行日 1995年9月1日
Published Date 1995/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900834
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Ⅰ.はじめに
細胞の癌化は,複数の遺伝子異常の蓄積により発生すると考えられるようになり,この異常遺伝子を正常なものに置換することで癌を制御しようとする治療方法も試みられるようになってきた。このような遺伝子治療では,欠損した遺伝子を補充する方法が一般的であるが,逆に,細胞の増殖や癌化に密接に関与していると思われる遺伝子と相補的な塩基配列をもつアンチセンス分子を用いてその機能をブロックする,いわゆるアンチセンス法も注目されつつある18,24)。アンチセンス分子としては,アンチセンスオリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴマー),アンチセンスRNA発現ベクター,合成リボザイム,リボザイム発現ベクター,などが用いられてきたが,細胞膜への透過性や細胞内での安定性など多くの問題点も指摘されている1,2)。一方,悪性グリオーマの組織中にも,種々の増殖に関連した諸因子をコードする遺伝子の過剰発現などが報告されており15),これらの異常な遺伝子発現を,アンチセンス法でコントロールすることにより,グリオーマ細胞の増殖を制御しようとする試みも有用と考えられる。そこで,われわれは,ヌクレオシド間のホスフォジエステル基の酸素を硫黄に置換したオリゴホスフォロサイオエート(S—オリゴ)を用いたアンチセンス法などを応用し,グリオーマに対するアンチセンス療法の可能性に関して検討を進めている。
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