Japanese
English
特集 神経疾患治療の進歩
大脳基底核疾患に対する淡蒼球手術
Pallidotomy for Basal Ganglia Disorders
島 史雄
1
Fumio Shima
1
1九州大学医学部脳研臨床神経生理
1Department of Clinical Neurophysiology, Neurological Institute, Kyushu University
キーワード:
stereotactic surgery
,
basal ganglia disorders
,
pallidotomy
,
microelectrode
,
thalamus
,
pedunculopontine nucleus
Keyword:
stereotactic surgery
,
basal ganglia disorders
,
pallidotomy
,
microelectrode
,
thalamus
,
pedunculopontine nucleus
pp.651-658
発行日 1995年7月1日
Published Date 1995/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900811
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はじめに
多くの不随意運動は大脳基底核,なかでも黒質や線条体の病変に起因する。難治性の基底核疾患に対して過去30数年間もっぱら視床手術が行われ,淡蒼球手術は過去の治療法としてほとんど忘れ去られていた3)。一般に淡蒼球手術は視床手術とは違い手術効果が遅発性の傾向を示すことや,画像診断による支援が得られなかった時代には視床手術に比べて手術部位の同定が困難であったことによると思われる。最近,Leksellら34)が1950年代の半ばに開発した後腹側淡蒼球手術(posteroventral pallidotomy, PVP)が,Parkinson病(PD)における無動や姿勢反射障害などの,いわゆる"陰性運動徴候"を改善することが再発見され,にわかに淡蒼球手術が注目されるようになった14)。通常,手術対象になる不随意運動は,振戦やジストニアなど"陽性運動徴候"に属するものだけだったことを考えると"陰性運動徴候"の改善は極めて興味ある特徴である。また,PVPが復活した背景には,PDにおいてL-dopa療法を長期継続すると薬効の減弱とともに新たな不随意運動や精神障害が生じ,この時点で日常生活にもっとも影響を与える無動や姿勢異常に対して内科的治療だけでは如何ともし難い現状がある。
最近,著者ら27,28)はPDとともに視床手術では治療が困難な他の不随意運動に対してもPVPを行い,視床手術にはない治療効果を得ることができた。
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