連載 神経病理アトラス・5
脳脊髓炎の病理—その1
松山 春郎
1
1国立埼玉病院
pp.671-678
発行日 1964年8月1日
Published Date 1964/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206460
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ウイルス脳炎
直接ウイルスの感染によつて起こる疾患で,わが国において問題となつてくるものは,主として急性灰白髄炎(ポリオ),狂犬病,日本脳炎,単純性ヘルペス脳炎の4つである。
【特徴的な病理所見】肉眼的には,脳脊髄の腫脹と軟膜を含めての著明な充うつ血のほか,明らかな病変を指摘し難い場合が多い。組織学的には,以下の諸点があげられる。1)神経細胞の変化:ウイルスの細胞内の増殖により,神経細胞は変性・崩壊する。ニッスル顆粒は消失し,細胞体は好酸性に傾むく。核仁は消失し,核は暗染ついで崩壊する。死せる細胞はいわゆる小膠細胞により貪喰される(ノイロノファギィ)。2)小膠細胞の増殖:組織球を含めて既存の小膠細胞の増殖に血中からの遊出細胞が加わつて著明な限局病巣(グリア結節)を形成する。3)血管周囲細胞浸潤:初期には好中球の遊出が著明で,ついで単球,大小の淋巴球,形質細胞を認める。4)封入体:神経細胞,乏枝膠細胞その他に認められる。核内におけるものと原犬質内に在るものとある(狂犬病,ヘルペス脳炎など)。以上のごとき病変より成る病巣の占居部位は,感染せるウイルスの種類によつて変るから,ウイルス性脳脊髄炎の鑑別にはなはだ重要である。
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