連載 神経化学実験法・7
脳組織の脂質測定法—I.リン脂質
林 浩平
1
Hayashi Kohei
1
1群馬大学医学部生化学
pp.702-707
発行日 1964年8月1日
Published Date 1964/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206466
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
抽出と水洗
1.抽出
脳組織1gに20mlの割合でクロロホルムメタノール(C-M, 2容:1容)を加え,硝子ホモジェナイザーでホモジェナイズした後,遠心して上清を遠心管にとり,沈渣はもう一度C-M (2:1)で抽出して1回目の上清を入れた遠心管に加える。室温におけるこの操作で通常のリン脂質はほとんど抽出される。
【注意】組織量に対してC-M量が少ないと遠心しても組織が完全に沈澱しないか,上清が濁つているから,このような場合はC-M量を増せばよい。代謝実験の場合,反応をとめるため一般に3塩化酢酸が用いられるが,脂質を抽出する場合は用いないほうがよい。3塩化酢酸の使用により,脂質の変化(褐色になる,とくにプラスマローゲンが分解しやすい),蛋白質が非極性となつてC-Mに溶けやすくなる,C-Mだけでは抽出されない脂質(protein-bound inositide)も抽出されることなどがおこるためである。したがつて反応をとめるためには冷メタノールまたはアセトンを加え,濾過後,濾紙上の切片(ホモジェネイトの場合は遠心した沈査)をホモジェナイザーに入れて抽出するのがよい。大量の組織から抽出する場合は,あらかじめアセトンで処理するか(水,中性脂肪およびコレステロールの大部分が除かれる),1回目の抽出はC-M (1:1)にすることによつて抽出に使うC-M量を少なくすることができる。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.