書評
—編集 亀山正邦(住友病院院長・京都大学名誉教授) 荒木淑郎(熊本大学教授)—神経疾患の診かた 難しい症例をめぐる診断過程の着眼点
竹内 一夫
1
1杏林大学脳神経外科
pp.425
発行日 1989年4月1日
Published Date 1989/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206304
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臨床医学においては,深い経験が必要であることは言うまでもない。ことに,神経疾患の診療にあたっては,医師の永年にわたる臨床経験が患者の運命を左右する場合が少なくない。筆者などもすでに40年以上臨床にたずさわっているが,未だに毎日のように,新しい現象や難問に遭遇し,自らの経験不足を歎いている。たとえ同じ疾患でも患者によって病状や検査所見が異なることも珍しくなく,各人顔が違うようにそれぞれ個有の病状を呈するもので,とても教科書通りにゆかないと悟るまでにも大分時間がかかった。
一方,近年における医学の各領域の進歩には目ざましいものがあり,とくにCTをはじめとする画像診断法の進歩は,神経疾患の診療にも大いに貢献している。しかしそうかと言ってこれらによって万事解決というわけでは決してない。これはあたかもペニシリンなどの抗生物質の発見によっても,未だに臨床の場から感染症が姿を消さないのと同じである。CT,MRI,SPECTなど最新の診断法を駆使しても確定診断に至らず,生検・剖検・経過観察などによりはじめて明らかになる症例も少なくない。
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