書評
—編集 平野 朝雄(Montefiore Medical Center 神経病理学部門主任) 執筆 平野 朝雄(Montefiore Medical Center 神経病理学部門主任) 松井 孝嘉(日本脳神経研究所) 岩田 誠(東京大学助教授・神経内科) 加藤 丈夫(Montefiore Medical Center 神経病理学部門) 水澤 英洋(Montefiore Medical Center 神経病理学部門)—カラーアトラス神経病理 第2版
長嶋 和郎
1
1北海道大学第二病理
pp.1025
発行日 1988年11月1日
Published Date 1988/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206201
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- 文献概要
病理学の神経系部門をアメリカで開拓し,多くの日本の研究者を育てて下さっているNew Yorkの平野朝雄先生の「カラーアトラス神経病理」が再度新しい装いで出版された。病理形態学を実地病理学者の立場から編集された神経病理の入門書カラー版である。われわれ人体病理学に携わる者にとって,まず脳を開けるところから始まり,肉眼的に観察し,そして割を入れるという手順で進むこの本は,正に現場の雰囲気がそのまま伝わってくるような本である。傍に小さく書かれた解説からは平野先生の独特の口調が伝わってくる。マクロ・ミクロの神経病理をほとんど網羅しており,しかも全く重常的なアーティファクトの紹介から学閥的にもレベルの高い内容がそれとなく絵になって構成されている。
私がこの本を見てまず思ったことは「これは珍しいから報告しよう」と考えるような病変はほとんどがこのアトラスに載っており,学会発表がやりにくくなったなあという印象である。次に思ったことは,今まで多数の日本の研究者が平野先生にお世話になっているが,この本と平野先生の名著「神経病理を学ぶ人のために」(医学書院刊)を熟読すればもう留学しなくても充分だなあと感じた点である。第一の心配については,われわれはさらに突っ込んだ研究をして学会に出すべきだという風に学会のレベルアップにつながるし,第二の点は2冊の本を持ってNew Yorkへ行けば,暇をエンジョイできる留学が楽しめるということであろう。
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