書評
「カラーアトラス神経病理 第3版」―平野 朝雄●編著
日下 博文
1
1関西医大・神経内科学
pp.290
発行日 2007年3月1日
Published Date 2007/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100070
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神経学の基本知見を的確・明快に提示
1980年『カラーアトラス神経病理』の第1版が出版された。膨大な数のカラー写真からなる神経病理アトラスはまさに圧巻,そして,他に類を見なかった。ちょうど神経内科の認定医試験を控えており,早速に購入して平野先生のもう一つの名著『神経病理を学ぶ人のために』と併せて勉強した覚えがある。同じような経験の方は多数おられると思う。その後,これほど多くの国で翻訳されたアトラスは他にはないということを平野先生にうかがったが,十分うなずける。文字通り神経病理学の世界的なベストセラーである。記念すべきことに今年その改訂第3版が出版された。
「正常を知らないと異常はわからない」という平野先生の言葉どおりに,それぞれのセクションの冒頭に,正常の肉眼所見(大脳の外観と水平断など)と正常の顕微鏡所見が掲げられている。そして,その後に貴重な病理所見が続いている。非常にわかりやすい構成である。血管障害,外傷,発達障害,腫瘍,感染症,脱髄性疾患,種々の変性疾患,代謝異常など多彩な症例が収められている。これらは長年Montefiore Medical Centerで毎週行われているbrain cuttingの膨大な症例の中から,選び抜かれた知見・写真である。それぞれに平野先生の卓越した観察眼に基づいた解説が付いている。脳を観察するときの非常に実際的な注意点(たとえば高齢者と小児の硬膜の違いなど),顕鏡するときのアドバイスに加えて,実地の臨床に役立つコメントも多数みられる。神経病理を専門にする者だけでなく,神経学を学ぶ人であれば誰でも参考にすべき写真・知見である。
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