Japanese
English
総説
MPTP と Parkinson病
MPTP and Parkinson's Disease
今井 壽正
1
Hisamasa Imai
1
1順天堂大学医学部脳神経内科
1Department of Neurology, Juntendo University School of Medicine
pp.1011-1024
発行日 1988年11月1日
Published Date 1988/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206200
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はじめに
すでに周知のように,Parkinson病は,多くの中枢神経系変性疾患のなかで,その病態生理が"黒質線条体系のdopamine (DA)欠乏"27,82)として生化学レベルで最もよく解明されており,それに基づく生化学的補充療法が奏効した21)というおそらく唯一の疾患である。生化学的補充療法すなわちL-dopa療法によって患者の余命は延長した94)が,しかしこれはあくまでも対症療法であって,病気自体の進行を阻止する力のないことも一般に承認されている4,72)。この病態生化学の成果によって,本症の病因論は本格的究明の出発点に立ち至った。すなわち,Parkinson病の病因論は,臨床と病理さらに病態生化学の知見の上に立って「なぜ黒質のDAニューロンが選択的,非可逆的かつ進行性に変性脱落するのか?」との問いに答えようとするものでなければならない。
ところでこれまでに,ウイルス,遣伝,中毒物質,多因子説55),老化,さらにfree radical障害説と,本症の病因について,疫学から最近では分子生物学レベルに及ぶ多くの検討がなされてきた。その中には重要な知見がすでに散見されているが,全体としてはいまだ"群盲,象を撫でる"の感を免がれない状況にあった46)。
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