書評
—平野 朝雄 著—神経病理を学ぶ人のために
松山 春郎
1
1東京都神経科学総合研究所
pp.203
発行日 1977年2月1日
Published Date 1977/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204024
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平野さんというといつも思い出すのは,昭和32年にボストンからワシントンへ移る途中で,Montefire病院にZimmerman博士を訪ねたとき,何10枚もの橋のグリオームの標本をしらべるのに熱中している姿です。その後東京や外国での国際学会などでお会いする度毎に成長され,今では近代神経病理学の担い手としておしもおされぬ貫録を身にっけておられます。
この本は,日々の教育,臨床へのサービスに,御自分の研究活動を合致させて長年神経病理一途につとめてこられた筆者の努力の集積で,特に第Ⅰ章を読むと,Mon—tefire病院での全解剖例の脳をきりながら,レジデント相手に語りかけている平野さんの姿が目にみえるような気がします。第Ⅱ章は,今までの研究,特に電顕による広汎な筆者の研究が裏付けとなつているもので,細胞病変について,従来の教科書では学び得ない点にまで堀り下げられているのが特徴です。第Ⅲ章では筆者の最近の新しい研究を含めて,要領よく大づかみに各疾患について説明されています。このように解剖例での神経系のあつかい方,総論,各論が1つの本にまとめられているものは外国の本でも少なく,日本語の本では,分担執筆で計画されてはいましたが,実現しないままになつていて,この本が唯一のものと思います。きれいな写真と,特に沢山の図が,肉眼,組織,電顕像の解説につかわれている点,非常に親切であり,読者に分り易いよう気を使つておられる点敬服します。
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