Japanese
English
特集 脳腫瘍の病因
脳腫瘍のoncogene
Oncogene of Brain Tumor
山本 雅
1
Tadashi Yamamoto
1
1東京大学医科学研究所制癌研究部
1Department of Oncology, Institute of Medical Science, University of Tokyo
pp.817-823
発行日 1988年9月1日
Published Date 1988/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206168
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はじめに
癌の基礎研究は,分子生物学的アプローチにより,この数年の間に大きく進展した。特にRNA腫瘍ウイルスの癌遺伝子の発見を突破口として展開された,DNAクローニングを基本とした研究から,癌を遺伝子発現の変化に基づく疾患として捉えることが可能となってきた。事実,ヒトの腫瘍由来DNAからNIH 3T 3細胞をトランスフォームする癌遺伝子が同定されている。また,腫瘍細胞では,癌遺伝子が増幅していたり,染色体転座に伴って特定の癌原遺伝子の発現が変化している例が数多く報告されている。このような変化は,癌の発症,進展,転移などのいずれかの段階に係わっていると考えられよう。さらに,最近急速な勢いで解析が進められている劣性癌遺伝子(あるいは癌抑制遺伝子)と,ヒト癌—特に遺伝性の癌—との関わりは,大いに注目されるところである。
ここでは,ヒトの癌細胞で見い出される癌遺伝子を紹介し,そのことで最近の癌研究の動向を明らかにできればと願っている。
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