Japanese
English
特集 成長因子受容体/最近の進歩
c-erbB-2と細胞増殖
Biological effect of the ErbB-2 protein on cell growth
松田 覚
1
,
山本 雅
1
Satoru Matsuda
1
,
Tadashi Yamamoto
1
1東京大学医科学研究所制癌研究部
pp.567-571
発行日 1992年12月15日
Published Date 1992/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900512
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がん遺伝子の研究が進み,多くの遺伝子の同定およびその遺伝子産物の機能解析がなされてきた,この結果,がん遺伝子に対応するがん原遺伝子がコードする蛋白質は,正常細胞の分化や増殖の情報を司る重要な情報伝達経路上に存在していることが判明してきている。そして,これらの蛋白質に量的あるいは質的な変化が生じることにより正常細胞ががん化すると考えられるようになり,がん遺伝子産物の解析研究は重大な局面にさしかかってきた。
EGF受容体遺伝子の近縁遺伝子として同定されたc-erbB-2遺伝子は1),乳がんや胃がんなど様々ながん組織から遺伝子増幅や過剰発現が検出されており,加えてin vitroでの発がん実験結果からも,発がんに深く関与していることが示されている。しかし,この遺伝子の発現は正常成人組織ではあまり認められず,ほとんど胎児の上皮組織でのみ確認されることが報告されている2),このことから,ErbB-2蛋白質は正常上皮組織の分化発達段階で機能していると考えられるが,それがどうしてがん細胞で発現が生じるのか,またどのようなメカニズムでがん細胞たらしめるのかが現在の重要な研究課題となっている。
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