Japanese
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特集 ゲノムの構造
がん遺伝子の構造
Structure of oncogenes
豊島 久真男
1
,
山本 雅
1
Kumao Toyoshima
1
,
Tadashi Yamamoto
1
1東京大学医科学研究所制癌研究部
pp.288-294
発行日 1984年8月15日
Published Date 1984/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904599
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がん遺伝子の定義として,「特定の蛋白質をコードし,その蛋白質は細胞の発がんのみでなく,がんとしての性質の維持にも働いているもの」とした1)。この定義に従えば,急性発がん性のレトロウイルスで見出されて来たがん遺伝子は,そのカテゴリーに入る。しかし,同じレトロウイルスのLTR(long terminal repeat)はプロモーターやエンハンサーを含み,細胞をがん化することもあるが,そのがん化は自らの遺伝子産物によっておこるのではなく,細胞の特定の遺伝子の活性化によると考えられるため,これはがん遺伝子には分類しない。ところで,上記レトロウイルスのがん遺伝子は,正常細胞に感染したとき,直ちに細胞をがん化へ導くし,また,その遺伝情報の発現を止めたとき—例えば,がん遺伝子の温度感受性変異株で,細胞培養温度を非許容温度に上昇させたとき—細胞は正常状態に戻る。従って,これははじめの定義によく合致する。しかし,レトロウイルスで発見されたがん遺伝子に対応する細胞の遺伝子は,そのままでは細胞をがん化する能力はもっていない。これは一応細胞がん遺伝子(c-onc)と呼ばれ,先のウイルスがん遺伝子(v-onc)と区別されているが,さらにそのものには発がん性はないが,発がん性をもつ潜在能力のある遺伝子という意味でプロトオンコジン(proto-onc)とも呼ばれている2)。
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