特集 癌の臨床検査
I 癌そのものをとらえる検査
2 癌遺伝子に関する検査
C.臨床に有用な癌遺伝子 1)erbB関連遺伝子—c-erbB−1/EGFレセプターとc-erbB−2
山本 雅
1
Tadashi YAMAMOTO
1
1東京大学医科学研究所制癌研究部
pp.1302-1308
発行日 1989年10月30日
Published Date 1989/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917602
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はじめに
強い発癌能を有するレトロウイルスの分子生物学的解析から,これまでに25種類の癌遺伝子の存在が明らかにされている.これらの癌遺伝子ならびに対応する癌原遺伝子の構造と機能の解析から,レトロウイルス癌遺伝子の多くは,細胞の増殖を調節する蛋白質をコードする細胞性遺伝子に由来することが明らかとなった1).また,25種類の癌遺伝子のうちの半数近くがチロシンキナーゼをコードすることから,チロシンキナーゼの発現異常が細胞の癌化を導く大きな要因となっていることがわかる.
細胞性チロシンキナーゼには,3通りのグループが存在する2).一つはレセプター型で,EGFレセプターやインスリンレセプターなど増殖因子の受容体あるいはc-erb B−2/neu,ephやret,met遺伝子産物など,増殖因子受容体様蛋白質である.もう一つのグループは,非レセプター型チロシンキナーゼで,src,yes,fyn,lyn,fgr,hck,lck,tklの8種類の遺伝子産物である.src遺伝子産物p60srcに代表されるように,いずれの遺伝子産物も,分子量が60,000前後であり,アミノ酸配列の上でお互いによく似ている.これらの類似蛋白質をコードする遺伝子が8種類存在する意義について,特に,発現の特異性,また,それぞれの蛋白質の特異的な機能を中心に研究が進められているが,それらについてはここでは触れないので別の総説2,3)を参照していただきたい.
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