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はじめに
脳腫瘍も異なった腫瘍がそれぞれ異なった原因から成ると考えられる。遺伝的素因に基づく腫瘍の代表であるvon Recklinghausen's neurofibromatosisの遺伝子座が17番染色体のnerve growth factor receptor遺伝子に連鎖しているという最近の報告2)や,両側性acousticneurofibromatosisや両側性retinoblastomaではre-cessive geneの発現が腫瘍発生に関連していること54),meningiomaでは22番染色体の異常が高率に検出されていることなどヒト脳腫瘍の原因解明に染色体や遺伝子のレベルでの研究が進んでいる19)。しかし,これらの遺伝子が病態発生にどのように関与しているかは未だ不明である。
脳腫瘍は放射線や化学発癌剤でも実験的に誘発され,長い歴史の中に多数の業績がある29)。多くの研究は発生する腫瘍形態の解析と腫瘍発生母地の解明,および環境公害上での危険性の研究などが主であった。Shin et al55)は化学発癌剤で誘発した腫瘍cell lineから抽出したDNAをリン酸カルシウム法にてマウス培養細胞NIH3T3に注入し(transfection),細胞が腫瘍化することを証明した。このことは化学発癌での腫瘍発生も究極的には核酸の異常に基づくことを立証したと言えよう。一方tumor virusで提起された"がん遺伝子oncogene"という概念が核酸レベルで塩基配列も明瞭な実体として把握できるようになり,oncogeneの腫瘍化における役割,正常細胞におけるoncogeneの機能等の研究が現在最も精力的に行なわれており16),ヒト脳腫瘍でのoncogeneの発現も注日を集めている。
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