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1.はじめに
神経細胞は生後分裂することのないfixed postmito-tic cellであるから,老化や変性その他で一旦死滅すると再生することがない。したがって,神経細胞の減数が必ずおこるわけで,この変化が神経機能などと関連して従来注目された。一方,神経細胞が死にいたる過程,あるいは病変に反応し再生の機序が働く場合,あるいは神経細胞内に物質が異常に沈着する場合には,それぞれ神経細胞体の萎縮やcentral chromatolysisのごとく脹らむことや,あるいはbalooningというような変化がおこり,神経細胞体のサイズに変化がくる。また,神経細胞は広範にひろがる樹状突起をもっており,このような突起にもいろいろな変化がみられる。単なる突起のbran—chingの減少あるいは逆に増加のみならず,その太さの変化,形態の異常なども見られる。さらに,神経細胞には正常でもいろいろなサイズのものがあり,大脳皮質の層によりそれを構成する神経細胞はいろいろな大きさである。その他の神経核でも構成する神経細胞は必ずしも同じ大きさのものではなく,大細胞,小細胞などからなることが多い(表1)1)。いろいろな病態でどのサイズの神経細胞が障害されるかというのが本論の課題のひとつである。もちろん,神経細胞の軸索突起である神経線維にもいろいろなサイズがあり,これも疾患によって侵される線維の太さには特徴がある。
神経細胞のサイズと病的状態との関連についての研究は少ないし,また,病的状態ではもともとのサイズが萎縮,膨化などで変化するので,その関連についての判断がむずかしい面もある。ここでは,中枢神経系の老化や痴呆の場合の,神経細胞体を中心にしたサイズと関連した問題をとりあげてみたい。
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