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特集 遺伝子疾患解析の発展
アルツハイマー病
Alzheimer's disease
吉川 和明
1
Kazuaki Yoshikawa
1
1東京都精神医学総合研究所分子生物学研究室
pp.4-8
発行日 1988年2月15日
Published Date 1988/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905090
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アルツハイマー病(Alzheimer's disease,以下ADと略する)は初老期から老年期に始まる進行性の記憶障害と知能低下を特徴とする中枢神経系の変性疾患である。疾患名は進行性の痴呆を主症状とする初老期の女性の剖検例を最初に報告(1907年)したドイツの神経科医AloisAlzheimerに由来する。今日ではADの範疇には初老期だけでなく老年期に発症するアルツハイマー型老年痴呆(Senile dementia of the Alzheimer type)も含まれ,この病型の方が初老期発症のものに比べて圧倒的に多い。ADの一部には常染色体優性形式で遺伝する家族性アルツハイマー病(Familial Alzheimer's Disease,FADと略)があるが,大部分は散発性(sporadic)に発症する。ADにみられる病理学的所見としては高度の神経細胞の脱落に伴う脳の萎縮とともに神経原線維変化(neurofibrillary tangles),老人斑(senile plaques),アミロイド・アンギオパチー(amyloid angiopathy)などの特徴的な変化が見られる。
ADの病因を考える上で示唆に富む疾患はダウン症である。40歳以上に加齢が進んだダウン症患者の脳には上記のAD脳に見られる異常所見が出現する。そのためダウン症はADの類縁疾患としてADの病因を考える上で重要視されてきた。
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