書評
—監修 津山直一(国立身体障害者リハビリテ—ションセンター総長) 編集 上田 敏(東京大学教授) 大川嗣雄(横浜市立大学教授) 明石 謙(川崎医科大学教授)—標準リハビリテーション医学
砂原 茂一
1
1国立療養所東京病院
pp.402
発行日 1987年5月1日
Published Date 1987/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205898
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そのリハ医学教育史上における意義
リハビリテーション医学の本はずいぶん多い。少きに悩むというよりも多きに迷うというのが実状であろう。しかしそれらの多くは,どちらかというと新しい分野への知的好奇心や差当っての臨床上の必要性に対応するという種類のものである。そろそろ物珍しさ,間に合わせの域を脱して,内科とか整形外科とかの傅統的科目とならんだ,一般臨床家が誰でもその自己形成の道程で通過しなくてはならない,一つの基礎的臨床科目としての落ちつきを備えた教科書的な書物が出現してもいい時期ではないだろうか。
そのような機運あるいは期待に応じる形で現れたのはこの津山さん監修の"標準リハビリテーション医学"だといってよいであろう。もっともいざそのような標準的教科書を作るとなると改めてリハビリ医学の学問としての若さを思い知らされることになり,上田さん,大川さん,明石さんたち実際編集の衝に当った方々の苦労がしのばれるのである。どういう項目を選び,どのように排列し,どういう人に執筆を依頼し,それぞれの項目にどれほどのページを配分するかということから困難が始まったに違いない。その上編者たちは教科書らしい正統派的体系を作り上げようとする野心を抱いたようである。この本と直ちに対比することが適当かどうか問題だがRuskやKrusenのhandbook類を見ても各項目羅列的で,しかもその排列の順序は随分恣意的である。それに比べ,本書は序説にはじまり,リハ医学の基礎医学,リハ医学の臨床総論,臨床各論と大変整然とした構成を誇示している。もちろんいくらかの無理を承知の試みには違いないが医学生や研修生の頭の整理には便利であろう。
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