書評
—栗原 照幸—症例 神経内科学
寺尾 章
1
1川崎医科大学神経内科
pp.684
発行日 1986年7月1日
Published Date 1986/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205743
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神経内科についての大方の認識は,症状が難解で原因が不明の疾患が多く,治療よりも診断に重きがおかれる科と考えられているように思われる。本書を読まれた方々はこのような神経内科のイメージが一変することを感じられるであろう。症例を中心とした,きわめて平易でしかも簡潔な文章であり,書評を書くにあたり思わず興味をそそられ一気に読了した。これは著者の米国における6年間にわたるインターン,レジデント,専門医,研究者さらに教育者としての経歴に加え,帰国後の豊富な経験によって記述の内容が十分に消化され,読者に吸収され易い形で提示されているためと思われる。
本書は決して総花的な神経疾患の解説書ではない。新しい臨床診療技術の実用書として,日常で頻度が高くかつ重要な疾患が重点的に取り上げられている。まず序章では神経内科的アプローチの原則をのべ,検査の進め方をプラニングする道筋が簡潔に述べられている。第1章では脳血管障害とそれと鑑別を要する疾患について詳細な記述がなされ,それに続く8章までに,頭痛を主訴とする疾患,末梢神経と筋疾患,中枢神経系の感染症,発作性疾患,パーキンソン病,脊髄障害および多発性硬化症が提示されている。これらのうちでてんかんの脳波判読についてはさらに検討していただきたいが,全ての項目について著者の長年の臨床的経験から得られた,検査の進め方や診療上のコツと言うべき,具体的で分り易い貴重な内容が随所に盛り込まれている。
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