連載 症候学メモ・10
錐体外路性の腱反射亢進
平山 惠造
1
1千葉大学神経内科
pp.963
発行日 1985年10月1日
Published Date 1985/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205590
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◆腱反射の検査法が,本格的に神経学の領域で,実用化されるようになったのは今世紀のことで,Babin—skiによる「腱反射と骨反射(Réfle—xes tendineux et refiexes osseux)」がLe Bulletin médicale (1912)に収載されたのが大きな役割を演じている。彼はこの中で腱反射の亢進がいろいろな脳疾患や脊髄疾患で起こることを示し,錐体路病変が大きな共通事項であることを指摘した。
◆今日では腱反射亢進といえば錐体路障害,という図式が出来上っている。しかし,腱反身亢進が生じるのは錐体路障害のみであろうか。Babinskiは末梢神経障害による腱反射亢進の問題に言及し,二十数行を費しているが錐体外路障害によるものには触れていない。筆者はかねてから,錐体外路障害におけるある種の状態において腱反射の亢進することがあることを身近な者に説いて来ている。その最もよい例はPar—kinson病である。或る筋緊張状態においては,すなわち筋強剛が或る適当なレベルにあるときには,Par—kinson病で,腱反射は明らかに亢進状態を示す。筋強剛が強すぎれば,むしろ腱反射は抑制されて誘発され難くなる。また,腱反射が亢進していないときでも腱の叩打を繰返していると,明らかに反射の亢進して来ることがある。
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