随想
あの頃を偲び古典的神経学を想う
植木 幸明
1
1新潟大学
pp.1020-1021
発行日 1985年10月1日
Published Date 1985/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205600
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私は越後の田圃の中の寒村に生れ育った。先祖から其処である。したがって越後の血が濃く流れている。俊敏ではない。同時に二つ以上のことはできない。一つの仕事しかできない。頭の切り替えがうまくできず頭の回転が遅い。競争心,人に負けまいとする気はないではないが,スマートにぱっと仕事をやるということができない。せいぜい一つの仕事をコツコツと積みあげてゆくことしかできない。
1955年から1965年頃まで田中先生がはじめられたあとをついで大脳半球摘除術の研究を熱心に行った。ほとんどの教室の人がこれにかかりきり,臨床的研究のみならず動物実験も幅広く行った。但しいま大きな関心を呼んでいる神経心理学的研究の中で,離断現象といわれている症状については,まだ一般に知られていなかったので,鈴木・ビネー式知能検査,WAIS,ロールシャッハ・テスト,心情式検査などだけであったが。不幸にして死亡した3名の患者についても神経病理学教室の力を借りて剖検所見を詳しく検討していただき,それぞれの症例が手術後3週間,5年,15年と異なった期間の死亡例であったので,いろいろと貴重な知見を得ることができた。
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