Japanese
English
特集 多系統萎縮症—特にShy-Drager症候群を中心に
多系統変性におけるOnuf核について
The Onuf's Nucleus in Multiple System Degeneratlon
萬年 徹
1
Tohru Mannen
1
1東京大学医学部脳研神経内科
1Department of Neurology, Institute of Brain Research, School of Medicine, University of Tokyo
pp.695-698
発行日 1985年7月1日
Published Date 1985/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205549
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はじめに
Onuf核とは1899年から1900年にかけてアメリカの神経学者Onufrowicz1,2)によって記載された小さな脊髄前角細胞群であって,ヒトでは第2仙髄を中心に存在し,一部が第1,第3仙髄にのびている。この小さな神経細胞群が報告された頃は脊髄前角細胞の細胞構築が盛んに研究されていた頃であったため,神経解剖学の方面で注日する人はあったが,この核がいかなる機能を持つものであるかについては取り上げる人はほとんどなかった。ましてやいろいろな神経疾患で,この核がどんな変化を受けるかなどについては顧みる人は皆無であった。脊髄の変性疾患として代表的な筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病理を研究した多くの論文の中にさえ,この核の変化を記載したものは見出し得ない。
1975年から1977年にかけてわれわれ3〜5)は,ALSでは前角細胞がほとんど完全に変性消失するのにOnuf核のみが細胞集団として残存していることを発見し,その臨床的意義について考察した。その糸結果,Onuf核は外尿道および外肛門括約筋を支配しているものと結論したのである。この核の機能については,Satoら6)葛原ら7)をはじめとする多くの研究者によりわれわれの主張を裏付ける動物実験の成績が発表され今日に至っている。また,ALS以外の疾患でもこの核の変化について言及する論文8)をみることができるようになった。
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