書評
—監修 高木 健太郎(名古屋大学名誉教授) 山村 秀夫(日本専売公社東京病院長) 編集 山下 九三夫(東海大学医学部付属大磯病院) 鈴木 太(日本大学教授) 代田 文彦(財団法人日産厚生会玉川病院部長) 酒井 敏夫(東京慈恵会医科大学教授) 33氏分担執筆—東洋医学を学ぶ人のために
内薗 耕二
pp.610-611
発行日 1985年6月1日
Published Date 1985/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205533
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- 文献概要
東洋医学という言葉は一昔以前は大いに珍奇に聞えたものである。東洋医学,漢方,針,灸という連想は明治百年来,西洋医学一辺倒で育って来た我が国の大方の医学旨,医師にとっては,あまり楽しい心持よいひびきではなかった。医学には東洋も西洋もない,唯一つの科学的医学しか存在しないものとの確信のもとに育てられ,自らもそう思いこんで来た我々にとって,東洋医学という別個の医学の存在するということは,まことに奇異に思われてきたのである。東洋医学と我が国で呼ばれているものは,漢方というカテゴリーにふくまれるものであって,その発想や実体はおよそ科学的医学のみを信奉してきた現代医学にとっては異端のこととしか思われなかったのである。
ところがこの異端の医学は5,OOO年の年月にたえて今口まで脈々とその生命を維持してきたという事実がある。近代科学をベースにした西洋医学の思考方からすれば,漢方は原因結果の因果律によらない科学以前の伝承的民間療法としか見えなかったのである。我々の幼時の経験に照してみても,田舎の高齢患者が医者に見離され相手にされないままに,止むを得ず民間の伝承的施術者の門をたたき,針灸の治療を受けるというのが実体であった。
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