連載 神経心理学史の里程標・14
20世紀神経心理学への転回点(I)—FreudとMarie (前篇)
浜中 淑彦
1
1京都大学精神神経科
pp.410-411
発行日 1983年4月1日
Published Date 1983/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205112
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19世紀末の神経心理学において最も優勢であったのは,当時成立した三つの基本的考想—平面的局在論,階層論,連合主義—のうち古典的脳病理学の基盤となった連合主義であった。しかし今世紀前半の神経心理学への転回点を形成することになったのは連合主義的古典論への反省ないし批判と,Jacksonの階層論の流れを汲む立場であった。古典論を代表するWernickeとDeje—rineの生年が1840年代であるのに対し,この新しい思潮を荷うことになるA1Pick (1851-1924),C.v,Monakow (1853-1930),P.Marie(1853-1940)らはわずか数年の違いに過ぎぬとは言え,いずれも1850年代に出生しており,H. \Head (1861中1940)やK. Goldstein (1878-1965)がさらに10歳以上若い世代に属することは,時代の推移の跡を物語るものと言えるかもしれない。
ところでWernickeと対照的見解に立ったJackson自身には,WernickeやDejerineへの言及は全く見当らないが,古典論への批判とJacksonismへの共感は,前稿で触れたKussmaui(1877)に既に見られるのであって,彼は「語聾」と「感覚失語」の概念とpriorityをめぐってWernickeと論争(Fortschr.dMed.1;177−185 & 309−316,1883)することにもなったのであった。
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