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1885年Zurich大学最初の神経学講師となったv. Monakowは同時に自宅で開業もしたが,これが後にZürich大学の脳解剖学研究所Hirn—anatomisches Institut(1910創設)と神経科の母体となった。1894年教授となり1927年退官までの間に脳病理学の大著("Gehirnpathologie",1987初版,1905再版,第3版は"Die Lokalisation im Groβhirnund der Abban der Funktion durchkortikale Herde,1914)や連合心理学と古典論の批判(「物質と記憶」1896)を試みた哲学者H. Bergson(1859-1941)門下の精神経学者R. Mourgueとの共著「神経学と精神病理学の生物学的序論」(1928),生体論"Die Syneidesis, das biologische Gewissen"(1927)などを著し,オランダ人や日本人を含めて幾多の神経学者を育て,スイス神経学会を創立(1909),Schweizer Archiv für Neurologie und Psychiatrieの創刊(1917)に参加した。
v. Monakowの力動的神経心理学にジャクソニズムの影響がみられるのは言うまでもないが,その核心をなすのは無論"Diaschisis"(1902)と"chronogene Lokalisation"の考想である。Diaschisisとは急性脳損傷後にみられる一種の選択的ショック状態であって,損傷部位の局所症状だけではなく,その部位で切断された神経繊維起始部と終末部の機能障害も臨床症状として出現するとされる。この考えをv. Monakowは親交のあったFrankfurt a. M. の神経解剖学者L. Edinger(1855-1918)宛の書簡(1916年7月4日)で,文豪GoetheがGallについて語った興味深い一節を引用して説明している:「頭蓋内に僅かばかり突出している小部分たる脳がこの働きをするのでは無論なくて,この小部分に終る神経系全体なのだ,これはこの男〔Gall〕がいたる所で正しく感じとっていたように信じ難いことなのだが!」
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