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今年の夏の天気は異常だつた。8月に入つても梅雨が続き,終つた途端に台風に襲われ,暑い夏は短く秋が早いという予報に反して9月はじめまで暑く,その後また台風の被害を受けた。いろいろな情報を入手し易く,気象衛星までできた現在でも,日本の天気予報が以前と比べて大きく変わつたようには思われない。アメリカのある地方で,天気予報がよく当たるという話しを聞いたことがあり,実際予報通りによく晴れた日にフットボールの試合をみた記憶があるが,日本の天気の予測は素人が考えるよりも遥かにむずかしい所があるのであろう。
天気予報と比較し得るかどうか分からないが,病気の分類とか新しい病気か否かの判定も極めてむずかしい問題である。専門的な分野で恐縮であるが,Kugelberg-Welander (K-W)病またはWohlfart-K—W病と呼ばれる病気がある。子供の頃に発病し,進行性筋ジストロフィー症に似てしかも線維束攣縮を示すおかしな病気の存在に注目したのはWohlfartの方が早かつた。1942年にはWohlfartはこのような患者が筋生検で神経原性変化を示すことまで確認し,従来の文献例をもあげて報告している。しかしこの患者を神経原性筋萎縮とは考えず,筋ジストロフィー症とCharcot—Marie-Tooth病との中間型とする従来の考え方に固執していた。Kugelbergは筋電図という新しい手法を用いてWohlfartの患者を検査し,はじめてこの患者は筋ジストロフィー症ではなく脊髄性筋萎縮症であると言い(1949,1952,1954),1956年1つの疾患単位として記載した。これより先1955年Wohlfartらも同様な論文を発表したが,現在ではKugelbergらの先見性を認めてK-W病と呼ぶ人が多い。
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