Japanese
English
総説
脳のペプチド
Neuro-peptide
柿本 泰男
1
,
三宅 正治
1
,
井上 良一
1
Yasuo Kakimoto
1
,
Masaharu Miyake
1
,
Ryoich Inoue
1
1愛媛大学医学部精神神経科
1Department of Neuropsychiatry, Ehime University School of Medicine
pp.591-604
発行日 1978年6月1日
Published Date 1978/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204255
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I.はじめに
神経系特に脳におけるペプチド研究はここ数年の間に急速な展開を示した。これは脳それ自身を素材としてそこから物質を分離して研究を進めるという従来からの研究法が,実り始めたということではない。内分泌に関係した研究者の仕事の発展,薬理学的ないしは生物活性を指標として続けられたキニン類を中心として発展した研究,薬物のレセプターの研究の結果ペプチドの機能的役割についてより深い理解が得られ,一方では有機合成や分析技術の進歩,免疫学を中心にした微量物質検出法の進歩,生理学的技法の進歩に支えられて従来からの神経伝達を中心とした神経化学,神経生理の研究が急速に展開し始めたのである。古くからの神経経路の地図の一部が,アミンの螢光組織化学の方法の発展で機能的な色合いをつけられたところへ,今回は数多くのペプチドの登場によつて脳地図は多彩な色彩をもつて画かれそうな期待が生じている。
本編では,これらの進歩を歴史的に記載し,それに続いて個々のペプチドに関する知見をまとめてみたい。個々の物質については未だに知識は断片的であるし,著者らの能力では断片的知識の集積を1つの体系の中にまとめる事は困難であつたが,読者に現状のあらましを把握していただければ幸いである。
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