Japanese
English
総説
脊髄波
Electrospinogram
黒川 高秀
1
Takahide Kurokawa
1
1東京大学医学部整形外科
1Department of Orthopedic Surgery,Faculty of Medicine,University of Tokyo
pp.467-484
発行日 1978年5月1日
Published Date 1978/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204241
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
脊髄の活動電位の観察はGasser,Graham,Hughesら1-4)以来脊髄機構解明の生理学的手段として枚挙にいとまのない多数の研究に利用されてきた。概観すれば,脊髄表面で観察される活動電位の分析からはじまり,ついで脊髄内部構造の機能解明が行なわれ,脳から末梢神経にいたる神経機構の研究分野の中で脊髄の生理学は重要な地位を占めている。現在得られている脊髄機能に関する知識の多くがこうした動物実験から得られた知見に基づいていることはいうまでもない。
日常治療の立場からながめると,人体における脊髄機能の観察は長らくの間反射や感覚検査などによつて間接的に行なわれてきた。脳における脳波,筋における筋電図および心電図,さらに末梢神経の活動電位などがそれぞれの器官の活動を直接にとらえたものであることに比較すると,脊髄はそのような実用的手段を欠いている点でやや特異であつた。脊髄の解剖学的特徴がその主要な原因であろう。すなわち,脊髄は躯幹の深部にあつてしかもその割には神経組織の量が少ない。このために導出電極を深く挿入せざるをえないが,重要な機能が集中しているためにわずかの損傷が重大な結果をまねくという事情が強い制約となつていた。
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.