Japanese
English
電子顕微鏡による脳の形態学アトラス1
神経細胞—細胞体
Nerve cells : cell bodies
佐野 豊
1
,
松浦 忠夫
1
Yutaka Sano
1
,
Tadao Matsuura
1
1京都府立医科大学第1解剖学教室
1Department of Anatomy I, Kyoto Prefectural University of Medicine
pp.6-11
発行日 1978年1月1日
Published Date 1978/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204178
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Deiters (1865)やGolgi (1871)が,神経細胞の形態について先駆的な業績を発表した当時から,神経細胞といえばすぐ研究者のイメージの中に浮かぶいくつかのニューロンがある。ヒトデのように八方に突起を出し,典型的な虎斑物質を含む運動性脊髄前角細胞,繁茂した海草をみるような,みごとな広がりを示す樹状突起をもつた小脳のPurkinje細胞,僧帽状のそれぞれの頂点から出る3木の主幹樹状突起と底辺の中央から細い軸索突起を出す大脳皮質の大錐体細胞などがそれである。これらの細胞は,100億をこえる人脳の神経細胞の中では,大きさの点でも,機能の上でも,たしかに目立つた存在であり,代表的な神経細胞といえるかもしれない。しかし,視点をかえれば,これらの細胞はむしろ特殊な神経細胞であつて,それらの形態を論ずることによって他の数多いニューロンの形態を類推することはできない。
神経細胞という名称で一括される細胞群の中には,まさに多種多様の細胞が包括されているのであつて,内容的にこの名称は肝細胞とか,肥満細胞とかいう,単純で,類似した細胞を示す語とは著しく相違しているのである。直径7-8μの,赤血球とほぼ同じ大きををもつた顆粒細胞も,たとえばある種の硬骨魚の延髄背面に並ぶ,肉眼的にも明瞭にみとめることができる巨大細胞(Dorsalzellen)も同じく神経細胞であれば,μの単位の短い突起しか持たない細胞から,数mに達する長い突起をもつ細胞もまたニューロンの中に含まれている。換言すれば,100億のニューロンを代表できるような形態的特徴を具えた細胞などというものは存在しない。
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