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I.はじめに
1951年Ecker & Riemenschneider16)が脳血管写により,脳血管攣縮(cerebral vasospasm又はcerebral angiospasm)の存在を指摘して以来,同様な報告が多数なされた。特に今日のようにくも膜下出血患者に対して脳血管写が,rotineに,しかも反覆施行されるようになつてから,脳血管攣縮(以下vasospasmと呼ぶ)という可逆的ではあるが,比較的長期間に亘り持続する現象が,高頻度に発生することが,広く知られるようになつた。ここでいうvasospasmとは,主として脳動脈瘤破裂後に発生し,脳血管写上Willis circle近傍の比較的大きな血管に発生する動脈の狭細像のことを意味する。破裂脳動脈瘤の治療成績は,全体として見るならば手術用顕微鏡の導入や,antifibrinolytic agentsの効果的な使用並びに重点病棟(所謂I.C.U.System)による管理の普及にともない近年飛躍的な進歩をみている。しかし,vasospasmに対しては,これが一度発生すると,未だに適切な治療法とてなく,不可避的に脳に対する乏血性変化,脳浮腫の発生を惹起することとなり,これが存在するか否かは,根治手術の時期決定に大きく影響するだけでなく,患者の予後をも左右することになる。vasospasmの病態,解明の目的で,今日まで多数の実験的,臨床的な研究が行なわれて来たが,残念ながら今日尚,数多くの疑問点は解答を与えられぬまま残されているといつても過言ではない。本稿では現在まで行なわれて来た業績に触れると共に,脳血管攣縮の発生機序に関する私達の見解を述べてみたい。
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