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I.はじめに
脳神経領域の血管内手術(Intravascular Neurosur—gery, Endovascular Neurosurgery, InterventionalNeuroradiology)は,脳血管内にカテーテルをすすめ,その血管を閉塞する塞栓療法(embolization ther—apy)に端を発する。そのため,この分野での主たる治療対象は,脳血管障害の中でも出血性疾患に限られてきた。これらには内頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)をはじめとする動静脈瘻や動静脈奇形(AVM)が含まれている。また,脳動脈瘤の直接的な治療としての塞栓療法も種々の塞栓材料の進歩によって可能になってきた。
これら出血性脳血管障害の治療の進歩に対して,虚血性脳血管障害の血管内手術は最近になって応用可能になってきたものである(Table 1)。この中で,くも膜下出血後の脳血管攣縮(vasospasm)に対する血管形成術(balloon angioplasty)は,1984年Zubkovら14)によって報告され,その後その有効性が種々の臨床的,実験的研究において,確認されつつある6,9,12,13)。脳血管攣縮は,脳動脈の器質的な変性を伴う,長期にわたる動脈狭窄で,脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の予後を悪化させる最大の要因の1つである。脳血管攣縮の原因についてはこれまでの膨大な研究にもかかわらず,依然として不明であり,一旦発生した攣縮を確実に寛解するような薬物療法も確立していない。このような状況で攣縮血管を直接拡張することのできるこの方法は,重症脳血管攣縮の治療法として今後も重要な役割を果していくものと考えられる。我々12)は,1987年以来くも膜下出血後の脳血管攣縮44例に対して血管形成術を施行してきた。今回はこれらの症例の中から,特に重症くも膜下出血後の症候性脳血管攣縮例に対する本法の応用を報告し,その有用性と限界,手術適応とタイミングなどについて考察する。
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