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特集 くも膜下出血による脳血管攣縮の治療
くも膜下出血による脳血管攣縮のメカニズム
Pathogenesis of Cerebral Vasospasm Following Subarachnoid Hemorrhage
佐々木 富男
1
Tomio Sasaki
1
1東京大学医学部脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Faculty of Medicine, The University of Tokyo
キーワード:
subarachnoid hemorrhage
,
cerebral vasospasm
,
EDRF
,
endothelin
Keyword:
subarachnoid hemorrhage
,
cerebral vasospasm
,
EDRF
,
endothelin
pp.799-808
発行日 1993年9月1日
Published Date 1993/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900528
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はじめに
脳血管攣縮という現象には,1)くも膜下出血(SAH)後数日経過してから発生し,約10日間持続する,2)脳血管攣縮が極期に達すると塩酸パパベリンやCa2+拮抗薬などの強力な血管拡張薬をもってしても攣縮血管を拡張させることができない,といった特徴がある1)。エネルギー代謝の観点からみても,攣縮血管がCa2+拮抗薬によっても弛緩しないという観点からみても,脳血管攣縮が単なる血管平滑筋の持続的収縮であるとは考えにくい。攣縮の初期段階では血管平滑筋の収縮という要素が主体を占めるが,経過中に何らかの器質的変化が血管壁に発生し血管壁の強剛性が亢進した病態ではないかと現時点では考えられているが,その詳細は明らかにされていない。しかし,SAH発生後早期にくも膜下血腫を除去してやると脳血管攣縮の発生が予防される2)ことから,くも膜下血腫が脳血管攣縮の主たる発生要因であることは間違いない。血腫中のいかなる因子が主因なのか,どのような機序で攣縮が形成されていくのか,といった点に関しても幾つもの仮説が提唱されているが,誰もが納得する段階には至っていない。だが,最近,興味ある知見も報告されており,本稿ではこうした知見を紹介しつつ脳血管攣縮の発生機序について概説したい。
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