症候群・徴候・53
前脊髄動脈症候群
平山 恵造
1
1順大脳神経内科
pp.156
発行日 1976年2月1日
Published Date 1976/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203841
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脊髄の横断面上,前3/4を灌流する前脊髄動脈の閉塞性機転によつてひき起こされる症候群である。その領域には前角,中心灰白質,側角,前索,側索ならびに後索の前部(1/4)と後角の基部が含まれる。この症候群には,この様な血管分布上のtopo—graphyの特質から説明される症状と,脊髄軟化に共通する症状発現様式と経過とが特徴的である。すなわち,
A)病変のtopographyを示す症状として,①錐体路又は前角障害による対麻痺又は四肢麻痺胸髄以下の病変では対麻痺,頸膨大病変では下肢は上位運動ニューロンの,上肢は下位運動ニューロンの障害による四肢麻痺,それ以上の頸髄では四肢とも上位運動ニューロン障害による四肢麻痺),②中心灰白質,脊髄視床路病変による病変以下の温痛覚障害と僅かな程度の触覚障害,③深部知覚,識別触覚は後索が無傷のため保全されてる。
これらが症状の主体をなし,これに膀胱,性機能障害(失禁,尿閉,持続勃起,無月経),おくれて起こる筋萎縮,皮膚栄養障害がみられる。血管障害は,時に一側性に起って不全型Brown-Séquard症候群を呈することがあり(病変側片麻痺と反対側温痛覚障害。深部知覚保全。),また頸膨大部病変では前灰白質軟化(Pierre Marie et Foix)による小手筋萎縮を呈するものがある。
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