症候群・徴候・41
Horner (ホルネル)症候群
平山 恵造
1
1順大脳神経内科
pp.785
発行日 1975年7月1日
Published Date 1975/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203742
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本症候群は①縮瞳,②瞼裂狭小,③眼球陥入の三徴候からなる。この中で最も明らかで,恒常的なのは縮瞳であるが,それは強いものでなく,反対眼と比較するときに明らかになる相対的縮瞳の程度であることが多い。瞼裂の狭小は上眼瞼の軽い降下によるもので,眼瞼下垂とも称されるが(事実,Horner自身この症候群を"Über eine Form vonPtosis"と題して書いている),動眼神経麻痺に際してみられる眼瞼下垂とは明らかにその性質を異にしているので区別すべきであろう(詳記省略)。第3の徴候とされている眼球陥入は論議のあるところで,これを疑問視する人もあり,実際,一見そのようにみえても,眼球の突出度を測定して,健側眼との差が殆んど見出せないことが多い。しかし,障害の起つた初期にはみられるともいわれている。
本症候群を最も典型的に生ずるのはC8-D2にある脊髄毛様中枢Cen—trum cilio-spinaleを障害する病変である。これより末梢の頸部交感神経の節前ニューロンの障害でも,節後ニューロンの障害でも,あるいはまた脊髄毛様中枢より中枢側の上位ニューロンの障害によっても本症候群が生ずるとされているが,脊髄毛様中枢より遠ざかる程,三徴候を完備することが少なくなると共に軽微になるが,その中で最も見られ易いのは縮瞳で,殆んど縮瞳のみの場合もある(これをHorner症候群というべきか疑問が残るが)。脊髄空洞症などの頸髄病変や,縦隔洞腫瘍肺尖部癌などで本症候群が明瞭にみられ,脳幹,視床部病変では稀に観察されるが,縮瞳のみのことが多いことはそれを物語つている。
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