書評
—高橋 正義 著—Color Atlas of Cancer Cytology
太田 邦夫
1
1東大病理
pp.593
発行日 1972年5月1日
Published Date 1972/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203118
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A4判362頁,写真749,内カラー253の大冊で,全英文の原著であり,日本の学者としてこれだけのものをまとめる努力は大したものだと考えながら,目を通させていただいた。始めの90頁は細胞診断学総論で,残りの230頁が各論に割当てられ,女性性器(60頁),乳腺(15頁),呼吸器(45頁),消化器(35頁),中枢神経系(14頁),泌尿器(17頁),体腔(35頁)など重要な剥落溶細胞診の対象のすべてを網羅している他,リンパ節,皮膚,粘膜などにまでわたつている。
著者高橋正義博士は,臨床細胞学に献身する病理学者で,現在日本臨床細胞学界の一中心をなす方であるが,世界中で数少い真の形態病理学に通じた細胞診学者といえる。病理組織学を軸として,オーソドックスのPapanicolaon染色細胞材料,電子顕微鏡,走査顕微鏡,螢光抗体法,組織化学,核分析法など各種の手技を活用した細胞診の実体が,豊富で見事なカラー写真に再現されているのは,この人をおいて日本にはないとうなづける立派なものである。すべての写真は自ら指診し,焼付けまでなさつたときいているが,この膨大な材料の裏には,更に大きな蓄積があるにちがいない。
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