書評
—神奈川県交通救急センター 編集—交通災害外科の実際
宇山 理雄
1
1京都第二赤十字病院
pp.577
発行日 1972年5月1日
Published Date 1972/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203115
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交通災害は自動車産業のもたらした公害ともいえるもので重要な社会問題であり,これに伴う救急医療のあり方も問題となっている。交通災害外科の医療内容の向上についての社会的要望が切実であるにもかかわらずこれと積極的にとり組む態度を示す総合病院は少く,設備内容の比較的低い中小病院や診療所にそのしわよせが及んでいるのがわが国の現状である。
神奈川県の済生会病院は県の交通の要路に位置し,交通災害の最も多い地点であり,地域住民の要望に答えて早くから神奈川県交通救急センターとして活躍している総合病院として有名である。この病院は独立採算制をとる済生会病院でありながら,神奈川県が交通救急センターとして資金援助をしている点において特色があり,救急告示病院としての経済的不安が比較的少なく医療設備が充実しており,大学の医局との直接連絡により高度の医療内容が期待できる交通災害センターである。この種の救急病院としては理想の形式の病院であると思う。この病院のスタッフにより編集された本書のねらいの一つは中小病院医院にも参考になるような具体的な記述内容にすることであつたようで,交通災害外科の医療内容の向上が切実に要望されている今日において誠に時機を得たものと思う。
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