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George N. Papanicolaouがヒトの腟塗抹細胞で女性性周期や閉経期に関する論文を発表し始めたのは1933年頃からであるし,子宮癌細胞診は1941年以降であるから,wet smearとしてのPapanicolaou法は今日で既に40年の歴史を持つといってよいであろう.一方dry smearに対してエオジンとメチレン青の混合によって生じるラヅールを主体とするMay-GrünwaldやGiemsaの方法はPapanicolaouよりも更に20年から10年以上古い歴史を持っている.いずれもが光顕レベルでの単一細胞染色法,固定法としてほぼ完成された手技といってよい.したがって,そこからは細胞に関する実に多様で豊富な形態学的情報をとり出すことができるものだという感を近頃ますます深めている.それはPapanicolaouの方法がわが国に入って来た昭和20数年頃の予想を遙かに上廻っているばかりでなく,もはやこの方法がかっての血液形態学の隆盛を上廻る実用性と広い応用性を確立したことを意味している.この方面の学会活動では剥離細胞学国際学会が1962年に発足し,のち2年毎のInternational Academy of Cytologyに変って第4回が昨年ロンドンで盛大に行なわれたし,日本臨床細胞学会とそのスクリーナー部会の活動も目覚しい.日本臨床細胞学会と日本臨床病理学会共催の細胞検査士資格認定試験も今年12月で第4回を迎えようとしているところであるが,今までに送り出した合格者数137名は決して多いとは言えぬとしても,その人達の能力は国際水準をたしかに抜いており,近々実現する国際的統一資格認定についても何等遜色なしと考えている.スクリーナー養成学級も増加しつつあり細胞診に対する社会の需要は一層大きいという実状である.
細胞診関係の著書も近年急激に増加して来た.いま10指に余る力作が世に出て大いに売れているらしい.それらの著者がいずれも油の乗り切った細胞診指導医であり,今日に到る経験の蓄積が堰を切って溢れ出した様相を呈しているのは一種の壮観でもある.
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