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著者はわが国における放射線科医のTop levelであり,またこの分野における第一人者であることは,今更紹介するまでもない。また著者は放射線医学領域における私の最も尊敬する先輩の一人でもあるがこの大家が進んで外国より著書の出版を刊行されたことに先ず心からの賛辞を呈したい。従来日本にも幾多のすぐれた研究業績があるが,それを外国入にわかる外国語で発表することが大切であり,私共後輩は著者をみならつて,すべからくinternationalとならなければならない。日本国内だけでなく世界に通用する内容と発表をもつべきであることを改めて深く感ずるものである。
さて私はかねがねX線診断におけるRoentgen Normal Anatomyの占める位置が極めて高く,Normalpatternを十分に理解しなくては,Abnormal patternの解析はできないと思つている。また更にX線診断において極めて大切なことは,Abnormal patternをCheckできても,これを立体的に把握しなければ,真の意味での診断とはならないということである。すなわちAbno—rmal patternを発見し,更にそれらpatternをより早く,的確に把握することが必要である。そのためには立体的に把握することが大切となり著者も述べておられるごとく,二方向撮影だけでは十分ではない。図学を学ばれた方はよく御存知のとおり一物体の把握には,正面図,側面図および平面図が最低必要条件であり,普通にとられる二方向撮影は,いわば正面図および側面図であり,これらに斜方向撮影等を加えたとしても未だ十分でない。Axial Trans—verse Tomogramは,いわば平面図のごときものである。従来本法の重要性はX線診断および放射線治療の領域で益々高まりつつあるが,そのpatternの解析については十分でなく,基本となるNormal patternについては屍体を基礎とした横断解剖図との対比を主とし,いわゆる生体を基礎としての系統的な解析を行なつた成書はみられない。本書は身体各部にわたつてそれぞれの基準における横断解剖図と比較して生体におけるAxial Transverse To—mogramのNomal patternにつき詳細な解説を加えられ,更に臨床例につき,その重要性が述べられている。例えば四肢骨などあまり太くないものではとかく二方向撮影等で全体的に把握できると考えがちであるが,本法により周囲軟部組織との関係等をよりよく把握することができるし,また更に日常診断に際ししばしば極めて困難である腹部臓器間の位置的関係も,本法を活用することにより,より的確に把握しうることが少なくない。
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