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消化器病,特に診断に携わる者にとって,病理学は,どうして,あるいはどういう時に必要であろうか.総論的には病変の理解を深くする,ということである.それに,診断医はもともと病理形態学が好きであるに決まっている.診断学は形態学の一部であり,形態学は診断学の一部である.例えば内視鏡医にとって,みている所見がどうしてそういう形態,色彩を呈するかに興味をもち,かつ理解しなければ,とうてい長い期間内視鏡医であり続けることは不可能であるし,仮にあり続けるとしても単に世の中に害を流し続けているにすぎない.すなわち形態診断学をやっていくうえでは,常に病理総論,マクロ・ミクロとの対話が必要である.対話をする相手が良ければ良いほど効果的であるし,悪ければどうなるかは言う必要もないであろう.
そういう観点からも,今回,医学書院(New York)より上梓されたLewinらの“Gastrointestinal Pathology and Its Clinical Implications”は臨床家にとって待望久しいモノグラフである.2分冊,全体で1,400頁を越す消化器病理学の成書である.生検材料,外科摘出標本の取り扱いから,消化器病理のあらゆる事項を対象とした意欲的なreferencetextである.本書の特色は,①病理学の教科書では一般的だが,専門書ではまれな「総論・各論」の2本立てであり,総論は340頁と全体の約1/4を占め,それだけで優に1冊の本となる分量であると共に,内容も充実している.②2分冊のうちVol.1が「総論」と「食道・胃・十二指腸」,Vol.2が「腸管」より成ることからわかるように,どちらかというと腸管の病理にエネルギーが注がれている.③臨床的事項にページが割かれていて,病理を広い意味での臨床の一部とする姿勢がうかがわれる,などである.
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