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あとがき
臺 弘
pp.324
発行日 1969年3月1日
Published Date 1969/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202525
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この編集後記に今燃えさかつている大学紛争のことを述べるのは少し場ちがいのような気もする。しかし医学部は元来紛争の火元であるし,これは燎原の火のように全国にひろがつて,現在ストライキ中の大学医学部もいくつかある。大部分の医学生や若い医者はこの運動に参加して,大学病院といわず,一般病院といわず,多かれ少なかれみな診療や研究に影響をうけている。早晩,学会にも波は及ぶであろう。だからここで大学紛争をとり上げても間違つていることはないだろう。
筆者はたまたま医学部のいわゆる執行部の一員に加えられたため,体制側の責任者としての苦労もしたたかに味わつた。今になって思うのだが,若い者も,年配者も--筆者ももちろん含めて--時代の大きな流れについての認識が浅かつたことは否めない。時流を予知していても現在のような形で展開するとは多くの人が考えなかつたようである。さらにまた嘆かなければならないことは,今になつてもこの紛争がどのように終息するかについて明確な見通しがないことである。
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