Japanese
English
特集 脳の電気活動と行動
いわゆる逆説波型と睡眠深度
A Study of the Depth of Sleep with Special Reference to the Paradoxical Phase of Sleep
大熊 輝雄
1
,
中村 圭佐
1
,
林 秋男
1
,
藤森 正大
1
1東京大学医学部精神神経科,神経研究所神経生理研究室
pp.153-160
発行日 1966年2月1日
Published Date 1966/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201993
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I.はじめに
逆説睡眠相あるいは賦活睡眠期は,脳波パタンは覚醒時のそれに近いのに,行動的にはかなり深い睡眠状態にあると思われる睡眠の一段階をさすが,このような脳波パ眠ンと行動とのみかけ上の不一致を生ずる神経機序については,Aserinsky and Kleitman (1955), Dement and Kleitman (1957), Dement (1958), Jouvetら(1959)などの賦活睡眠についての初期の研究以来,最近にいたるまで多くの研究がおこなわれている。
ところで,賦活睡眠期の睡眠の深さについては,ヒトと動物とでかなりの相異があると考えられている。すなわち,ネコの賦活睡眠期に,中脳網様体に高頻度電気刺激を与えてネコを行動的に覚醒させるに要する刺激の強さ,すなわち覚醒閾値を測定すると,これは他の睡眠期にくらべてもつとも高い(Jouvetら; 1959, Hubel; 1960, Benoit et Bloch; 1960)。したがって,中脳網様体刺激による覚醒閾値に関するかぎり,賦活睡眠期はもっとも深い睡眠段階ということになる。このような所見にもとづいて,賦活睡眠期を深睡眠deep sleepと呼ぶ研究者もある。しかし,ヒトの賦活睡眠期の睡眠深度は,自覚的体験からみても,感覚刺激にたいする反応からみてもそれほど深くないと考えられている(Schwartz; 1961,古閑;1962, Kleitman; 1963)。
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