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〔57〕脳血管連続立体撮影装置と若干の使用経験について
レ線による立体撮影を行なうには,レ線管球の位置を変えて2度同一の撮影操作をくり返す古典的方法があるが,血管撮影の場合には患者の体質をまつたく同一に保ちながらフィルムを交換し,造影剤注入等の操作をまつたく同じ条件でくり返すには,術者の側にも困難があり,また患者に対する負荷の倍加も憂慮され,脳血管立体撮影をroutineに実施するには抵抗が感じられていた。最近,連続撮影装置に,二コのレ線管球を接続してそれぞれの定位置に置き,二コのレ線管球より交互にレ線の曝射を行なって,連続撮影の一連のフィルムに,立体視用の幾組かのpairを得る方法を考案し,古典的血管立体撮影法における困難性を克服し,患者に対する負荷の倍加をみることもなく,ただ1回の造影剤注入による脳血管立体撮影法を試みた.すなわち連のフィルムのうち第1,3,5,...のフィルムは一方のレ線管球より,また第2,4,6,...のフィルムは他方のレ線管球より撮影されたもので,第1と第2,第3と4,第5と6,...のフィルムを組合せてそれぞれ動脈相,毛細血管相,静脈相等の立体視用血管相のpairとする。この方法では立体視用のpairはまったく同時に撮影されたものではないので,その間に多少の時間的ずれ,従って血管相のずれが存在するが,この間隔を短くすることによつて(マツキ製作所製連続撮影装置を用いたため,この最小撮影時間間隔は約0.4秒である),実用的には十分立体視可能なpairとすることができた。
脳血管立体撮影を行なつて,space-taking lesionにおける脳血管の偏位を立tdy的に詳細に観察することはもちろん有益であるが,特に正常人には存在しない腫瘍性,奇形性あるいは側副血行路等の異常血管が出現している場合には,単に血管撮影の前後像,側面像の観察のみでは,この異常血管の解剖学的位置関係を十分立体的に把握することが困難であることが多く,立体撮影によつてはじめて,この異常血管の解剖学的位置に関する理解を深めることができるものと考えられる。
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