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〔75〕medulloblastoma治療の反省
medulloblastomaは再発をきたさないほど十分満足すべき全摘出は現在のところほとんどあり得ない。幸いにして本腫瘍は通常レントゲンにきわめて敏感であるので,毎常レ線照射が行なわれる。もしレ線的に処置されない時は半年〜1年で死の転帰をとるものである。
われわれの教室において,手術あるいは剖検によつてmedulloblastomaであることが確認された10例について考察した。治療の方法によつて分類すると,全身状態不良のために側脳室ドレナージ,または後頭下減圧術のみにとどめたもの3例,全摘1例,biopsy,部分切除,あるいは全摘を行ない術後レ線照射を併用したもの5例、後頭下減圧開頭を行ない肉眼的にmedulloblastomaと思われる腫瘍を確認し,レ線照射を施行したもの1例である。術後の生存期間を検討してみると,全身状態不良のために側脳室ドレナージを行なつた例が最短で術後1日目に死亡,その他は最後の症例を除けば,24日〜8カ月で,ほとんどが1年以内の生存期間である。24日の例は小脳発作を起こして死亡,剖検により脳底部および穹隆部に多数の転移巣が認められた。最後の症例すなわち腫瘍に直接手術的侵襲を加えず,後頭下減圧術にとどめ,これにレ線照射を行なつた1例は2年を経過する今日元気に学校に通つている。以上のことから少数例ではあるが,われわれの経験例から言い得ることは,腫瘍をこわすような操作はいつさいしないで,そのままdecompres—sionとして放射線療法を行なつた例が,延命効果が最も大であるということである。また一般的に,腫瘍に手術侵襲を加えるならばただbiopsyのみにとどめて,放射線療法を強力に行なうほうが成績はいいようである。結局medulloblastomaに対しては,身体他部の悪性腫瘍は趣きをやや異にして,現在なお姑息的療法のほうが,より長い延命効果を得るといえる。
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