書評
—John Carew Eccles 著—THE PHYSIOLOGY OF SYNAPSES
内薗 耕二
1
1東大医学部生理
pp.733
発行日 1964年9月1日
Published Date 1964/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201698
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エックルスはその学勲により今日英国政府からSirの称号を授けられているけれども,彼のたくましい研究活動をみているとエックルス卿などと敬称をたてまつつて床の間に飾つておく気にはとてもならない。昔は夜に日について実験をつづけ,彼のまわりの若い研究者をとことんまでしぼりあげるほどのエネルギツシュぶりだつたと語り伝えられている。さすがに還歴をすぎた今日ではそれほどまでではなく,今日の実験はこれまで,後は明朝まで君にまかせるといつて深夜1人でわが家に帰つてゆくといわれる。インドの故ネールに似た風貌とそれ以上の精桿さが,五体にみなぎつているのがエックルスである。彼の師,Sheringtonは英国流の孤高をまもる哲学者風な研究態度がみうけられる。Sheringtonの著書は一般に難解で彼の哲学になれたものでないとその真意を理解し難いというのが定評のようである。
そこへいくとエックルスは直截簡明で,何ごとも快刀乱麻を断つの気魄にみちみちている。そしてエックルスは多作である。昔の論文をみるととうてい今日の学理とあいいれない論理をいささか強力におしすぎている気がしないでもない。そこがまた若い人々をひきつける魅力でもあろう。
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