巻頭言
BiophysicsとPhysiology
真島 英信
1
1順天堂大学生理学教室
pp.109
発行日 1960年6月15日
Published Date 1960/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906128
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Biophysicsあるいは生物物理学という字の意味は若林先生*のいわれるように,Physicsの一分科で生物界の物理現象を対象とするものであろう。またPhysiologyあるいは生理学は,狭義に解釈してphysical Biologyとしても,あくまで生命現象を対象としており,なるほど物理的装置を使つているけれども,物質現象を対象としている物理学とはかなり本質的な差異があると考えられる。少くとも私自身は生理学者でありたいと思つており,生物物理学者とは呼ばれたくない。生命現象といつても物質現象の集合に過ぎないというようなことは,口で言うことは易しいが,現実の我々の知識を反省してみるととてもそんなに簡単に片附けられるものではないということを生理学者ならば皆よく知つている。
形質膜の興奮という最もphysicalな現象について考えても,かつて神秘的に見えた時代は去つて今では電気現象として解析されており,更に最近はNa,Kの出入であるというように物質現象に帰着していくかに見える。しかしその根本に横たわつているイオンの透過性というものはいまだ不可知であり,その意味で神秘的である。我々生理学者はこのような不可知の現象のメカニズムに対して分析を進めていくのであるが,親現象の分析によつて幾つかの子現象が得られても,またその子現象を分析していかなければならない。前の例でいえば興奮,活動電位,透過性というような順序である。
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